第2回研修会「認知症ケア~認知症の方の気持ちを理解しよう~」質問カードへの講師回答


令和元年度大分県介護福祉士会第2回研修会 
質問カードへの講師回答
第2ブース
「認知症ケア~認知症の方の気持ちを理解しよう~」
講師:公益社団法人 大分県看護協会 
別府医療センター認知症看護認定看護師 坂本 理恵 氏


【 質問 ① 】
 認知症の方の気持ちが理解できない職員への良い指導方法はありますか。
【 講師回答 】
 患者さんの気持ちを理解してもらい指導していくのは難しいですよね。
 私も試行錯誤して研修を行っています。
 私は、認知症の症状(認知機能障害や行動・心理症状など)を説明し、

 パーソン・センタード・ケアを提唱されたトム・キッドウッド教授が書かれた詩
 【よくない状態の詩/パーソン・センタードではないケア】を読んで患者さんの
 気持ちを想像してもらったりしています。研修後、受講してくださった方からは
 「認知症の方のつらい気持ちを感じました」と感想をいただいたりしました。
 もしかしたら職員の方に響くこともあるかもしれませんので使用してみてください。
 その詩を下記に添付しておきますのでよかったら研修の際などに使ってみてください。
 また、YouTubeの【温情判決】
 (京都府で起きた実際にあった事件をまとめている動画2分36秒ほどのものです)を
 見てもらうなどすると認知症のことを学びたいと思ってくれる
 職員さんが出てくるかもしれません。
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 よくない状態の詩/パーソン・センタードではないケア
 薄暗く、そして霧が立ち込めている。なんだか知っている場所のような気もするし、
 初めての場所のような気もする。ここがどこなのか分からないまま、ただ歩き続けている。
 暑いのか、寒いのか、昼なのか夜なのか、検討がつかない。たまにモヤが引くと、
 その時だけ周りの物がはっきり見えたりもする。でも分かったかと思うと、
 ドッと疲れを感じて、また同じように分からなくなってしまう。
 濃いモヤの中を歩いていると、周りに人が何か不気味な話をしながら
 過ぎ去っていくような気もする。その人たちは、とても元気で何か
しようとしているように見えるが、何をしているのかは分からない。
 ところどころ、言葉の端に自分のことを話しているようにも思える。
 ときどき、懐かしいものがあるのに気づいて、近づくと急にそれは姿を消したり、
 得体のしれないものに姿を変えてしまう。すべてを失った感じがして一人ぼっちだ。
 どうしてよいのか分からず、すべてがこわい。
 その上、トイレや食事も満足に自分ではできない。
 自分の体が自分の思うように動かず、
 何か自分が汚くていない方がよいのではないかという感じがする。
 昔の元気な自分はどこか遠くに行ってしまい、ここに居るのが果たして
 自分なのか分からない。
 あっ、取り調べがはじまった。偉そうな人達が来て、私には到底できないような、
 わけの分からないことをしろというのだ。100から逆に数字を言うように強要したり、
 「50歳より年の人は両手を頭の上に挙げて」と言ったり。
 彼らはそれでいて、その尋問が何のためかは、決して言うことはないし、
 その結果をどう思うかも言うことはない。
 もしも、何のためにするのかを教えてくれていて、
 誰かが適切に導いてくれるのなら、喜んで出来ることはしようと思うのに。
 でも、これが現実なんだ。すべてが散り散りで、何の意味があるのか、
 これから、どうなっていくのかも分からない。かつて、自分がどこに居て、
 何をすべきか分かっていたころ;ひとりぼっちじゃなく、持てる力で、誇りを持って、
 毎日の務めを果たしていたころ;日は明るく自分を照らし、人生が味わい深く、
 変化に富んでいたころ;そのころの素晴らしい時は、暗闇と霧に紛れて、
 うすぼんやりとしているだけだ。
 ところがどうだ。今はあらゆるものが、無残に壊され、混沌とした中で、
 たった一人取り残されている。あるのは、ただ、二度と立ち直れないような、
 喪失感だけだ。かつては、自分だってまともな人間として扱われていた。
 でも今は、一人の人間としての価値はなくて、ただの用無しだ。
 少しでも相手に強く出られると、裸同然と言っていいほど無防備だ。
 そして、これはこれから先、ずっと見捨てられて、崩れ去って、
 人間じゃなくなるようなもんだ。
(Tom Kitwood,Dementia Reconsidered:the person comes first, open University PressBuckingham,1997より:水野 裕訳)
『実践パーソン・センタード・ケア』水野 裕 ワールドプランニング社 東京 2008年
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【 質問 ② 】
認知症がある方との関わり方、13のポイントとてもわかりやすく、
 実践したいと思います。

【 講師回答 】
 ありがとうございます。13ポイントを意識して接して頂くと患者さんと
 なじみの関係を築きやすくなるのではないかと思います。
 患者さんとなじみの関係を築いていくとケアがスムーズにいくことが多く、
 なじみの関係づくりは大事だと私は思っています。
 
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【 質問 ③ 】
 うつと認知症の境がわかりにくいです。
【 講師回答 】
 うつと認知症の判断は難しいですよね。認知症の初期症状には自発性が低下し、
 意欲がなくなることもありますので。
 高齢者は親しい方の死別を体験したり、退職など役割の喪失体験をする世代でもあります。
 そのため、うつ病になったり、注意散漫になって生じた物忘れが記憶障害と
間違われることもあるかもしれません。
本当は認知症なのにうつの診断がつき、抗うつ薬や抗不安薬が処方されると
認知症が悪化することもありますし、逆にうつ病を認知症と間違われて、
症状が改善せず、精神的にも身体的にもつらい状態が続く可能性もあるかもしれません。
認知症とうつ病は専門家での鑑別が難しく、中には併発している場合もあるかもしれません。
どちらの可能性も頭におきながら、症状を丁寧に観察し、医師へ症状を伝えて、
専門的な医療機関での検査につないでいくことも大切ではないかと思います。
認知症とうつ病の違い、アルツハイマー型認知症とうつ病の違いを表にしてまとめました。
よかったら参考にしてください。


 

認知症

うつ状態(うつ病)

発病様式

ゆっくり

急速に出現

初発症状

物忘れ、記憶障害など

抑うつ症状 食欲低下、身体の不調、不眠など

症状の訴え方

症状を軽く言う

知能低下を強く訴える

病識

気づかないことが多い

あり、失望している

日常生活

介助が必要

独力で身辺整理可能

 

 

アルツハイマー型認知症

うつ病

物忘れの自覚

あまりなく深刻ではないことが多い。何かおかしいと感じ不安を抱えていることもある

ある「こんなにわからなくなってしまった」など悲観的になりやすい。

会話のやり取り

質問されると誤った答えを言ったり、つじつまを合わせて取り繕ったりする傾向がある

問診などで質問されても「わからない」と答える傾向がある。能力の低下を招く



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【 質問 ④】
通所利用時、送り出しで自宅に訪問するのですが、
  行かないと言って家の中に入れてもらえない方の
  対応方法などあれば教えてもらいたいです。
【 講師回答 】
 利用者の人がデイサービスやデイケアを拒否する。スタッフとしては本当に困りますよね。
 このような患者さんは多いと思います。
 患者さん側にしてみると、「自分のことは自分で出来る」とプライドがある方や、
 「介護されるなんて情けない、気恥ずかしい」「介護をしてもらって迷惑をかけたくない」
 などの思いを抱えているかもしれません。また、認知症が進むとデイサービスやデイケアなどを
 利用する意味が理解できないこともあると思います。
 ケアマネさんや家族、その人の親しい人などにも協力をお願いし、「なぜ行きたくないのか」
 本人へ理由を聞いてみる、デイケアやデイサービスを利用するメリットを根気強く
 本人へ伝えてみるのはどうでしょうか。
  また、本人ができそうなことがあれば、手伝ってもらいなど役割をもってもらうことも、
 もしかしたら効果があるかもしれません。人間いくつになっても人の役に立ちたいという
 思いがあるのではないかと思います。デイサービスという言葉はあえて使わず、
 お茶出しの手伝いをしてほしいなどで誘ってみてはどうでしょうか。
 私もかかわっていた患者さんでデイサービスを拒否していた方がいました。
 (デイサービスを数回利用したことがある方でした)本人に拒否の理由を尋ねたときは
 「あんな所には行かない」という返事でした。ケアマネさんへ何かなかった変化が
 なかったか尋ねてみると同じデイサービスの利用者さんから物忘れすることを
 バカにされたということがわかりました。その後、ケアマネさんと協力し、
 デイサービス利用の曜日を変更し、本人が得意な俳句を他の利用者に教えて
 もらうなどを計画しました。かかりつけ医からもデイサービスに行くように
 勧めてもらい、利用していたヘルパーさん(本人が頼りにしていた方)からも
 勧めてもらうようにしました。何度か声かけしていき、デイサービスの再開が
 できました。この解決法がすべての人にあてはまるかはわかりませんが、
 試せるようなことがあれば試してみてください。
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【 質問 ⑤ 】
 わかりやすい説明で学ぶことが楽しかった。
【 講師回答 】
 ありがとうございます。研修を行っていく励みになります。
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【 質問 ⑥ 】
 現在訪問している方で常に怒りの感情をあらわにします。
 デイサービスの送り出しの為に伺っていますが、勝手口の所で中に入ることも難しく
 「デイは行かない」とかたくなに拒否され「家に来るな」と言います。
 時には押してみたり引いてみたりしてみますが怒り、拒否強い状態です。
 自宅での入浴ができず、隣の娘さんも困っています。デイサービスの利用の
 キャンセル電話を本人の前ですると笑顔になります。どのような関りをするのが良いでしょうか。
【 講師回答 】
 なぜ、デイサービスを拒否するのか理由は思い当たりませんか。
 本人へ尋ねてみることはできるでしょうか。本人が拒否するには何らかの
 理由があったのではと質問を読んで思いました。
 家族やケアマネさんなど利用者さんのことをよく知っている人が拒否する理由を
 知っているかもしれませんので情報を集めてみるのも大切なのかもしれません。
(④の質問の回答がヒントになるかもしれないです)
 自宅での入浴が難しいという問題もあるのですね。
 認知症高齢者の方は記憶障害や見当識障害などから理解力・判断力も低下し、
 入浴するというのが何をすることなのか、何をされることなのか瞬時に
 わからなくなっていることも考えられますし、入浴の動作をスムーズに
 やり遂げられるかわからないことによる不安などが入浴拒否につながって
 いるかもしれません。また、認知症の患者さんはいろんなことがおっくうに
 なってくるということもありますので、入浴もめんどくさいと思ってしまうかもしれません。
 もし、通所での入浴介助が難しいのであれば、訪問入浴のサービスなどの
 検討は難しいでしょうか。
 以前、自宅から出たがらず、入浴も拒否している患者さんの相談を受けたことがあります。
 その方は通所系のサービスをはじめから入れるのが難しい様子であったので、
 家族とも相談して訪問のサービスを導入することにしました。本人へも説明し、
 拒否がなかったので、訪問看護を利用し入浴介助も行ってもらうようにしました。
 入浴拒否の理由はめんどくさい、裸になるのか嫌、寒い、などだったようです。
 入浴拒否されたとき、足浴や手浴など行い、タッチングもとりいれながら
 コミュニケーションをとり、信頼関係を築くようにしてもらいました。
 その後、訪問看護時、毎回入浴はできなかったようですが、
 少しずつ入浴介助ができるようになりました。
(人それぞれかもしれませんが、訪問介護を拒否された患者さんに訪問看護を
 進めてみたところ拒否がないというケースが多かったです。
 まずは看護師の訪問から初めて、次のサービスにつなげていくとうまくいったこともあります。)
 本人の目線に立ちながらなぜ入浴したがらないのか、患者さんの情報を
 整理してみると何か解決の糸口が見えてくるかもしれません。
 研修で話した《思いを聞く》→《情報を集める》→《ニーズを見つける》ことを
 していくとよいかもしれません。

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【 質問 ⑦ 】
 持ちに寄り添ってゆっくり対応したいが、限られた時間内での支援で難しいことが多い。
【 講師回答 】
認知症の患者さんにゆっくり接したくても業務に追われていると難しいですよね。
勤務の時は視線を合わせ、笑顔で患者さんに自己紹介してあいさつをする。
その際によろしくお願いしますと握手を求めてみるから関係性を作っていくのでも
よいのではないかと思います。
かかわるときはなるべく快の刺激を与えるようにケアを行っていくと患者さんも
笑顔で優しい人と感じることができるのではないかと思います。
その際に日付や時間、季節の話題などを少しだけ入れていただくと現実見当識を
補うことができ、患者さんの不安の軽減につながってくと思います。
時間があるときは、患者さんの好きなこと、趣味、職業、家族のことなどを
聞いてみてください。
(男性は職業のこと 女性は子供のことや趣味の話などをすると色々話を
してくださるかもしれません。)昔の記憶は宝物といいますが、
生き生きとした表情でお話をしてくださる患者さんが多いです。
つらい、戦争の話をされる方などもいらっしゃいますが、共感しながら
聞いてもらえると患者さんもうれしいと思います。
できることから初めてみてください。



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